設立趣旨

 微粒子が液体中に懸濁・分散したスラリーは、セラミックスや電池材料を初めとする材料分野、食品、化粧品、医薬品など非常に広範な産業分野で利用されています。いずれの分野においてもスラリー制御のキーポイントは、液中で粒子集合状態(分散・凝集)を制御することにあります。しかしながら、粒子の分散・凝集状態の評価及び制御に焦点を当てた研究はほとんど無く、その結果、スラリーの最適化はそれぞれの分野で試行錯誤的に行わざるを得ないのが現状です。そこで、スラリーに関わる全分野の共通課題であるスラリー中の粒子分散・凝集状態の制御及びそれを実現するためのツールとなる粒子分散・凝集状態評価技術の開発について研究することを目的として、スラリー工学研究所を設立することとしました。

 本研究所では、主に企業との共同研究を通じて、実際の産業現場で取り扱われているスラリーの評価・制御に取り組みます。その中で、実際の産業現場の課題解決に資することができる、スラリー評価装置・手法の開発を目指します。特定の分野ではなく、様々な分野のスラリーを扱い、データや情報を収集することで、スラリー調製・評価に関する普遍的な汎用性の高い指針を確立することことができると考えています。得られたスラリー調製・評価に関する知見を広く産業界に普及できるように、共同研究だけではなく、企業の技術者向けの実験実習付きセミナーを開講するとともに、研究所が所有する技術・設備を活かした依頼分析業務も実施していきます。